白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
回診に来れない。彼に会えない。嫌だ。

「夜中に急患が入って、渡部先生が家から駆け付けてくれたんですけど、その後……」

看護師さんは、私の耳元でひそやかに言った。

「宿直室で嗚咽を漏らしながら、泣いていたとか。」

「はあ?嗚咽?」

看護師さんはシーっと、口に手を当てた。

「放っておいてって言われているんで、起こしにも言ってないんですけど。そろそろ昼間になるのに、まだ起きてこないです。」

「へえ……」

そんなことって、あるんだ。

私は検査案内を持ちながら、病室を出た。

ナースステーションの脇を通っても、本当だ。

彼の姿はどこにない。

エレベーターに乗って、1階へと行く。

この前車椅子で来た時に、すっかり道を覚えてしまった

MRI室。

この前も思ったけれど、冷たい感じがする。

「検査、受けに来ました。」

受付に検査案内を出すと、受付番号を渡された。
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