白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
だから私はそっと、先生に唇を近づけた。

いくら何でもキスしようとしたら、起きてくれるだろう。

でもその期待も外れ、私の唇は先生のモノに触れた。

柔らかい。先生の感触。

もっと触れていたい。先生の全部。

両腕で先生を抱きしめようとした時だ。

先生の腕が私の肩を掴んで、体を引き離した。

どうして?寝てるはずなのに。

「誰?」

ゆっくりと起き上がる先生の顔を見れない。

「えっ?天音さん?」

やっと私に気づいた。遅い。馬鹿。

「ちょっと、何でこんなところに?ここドクターの宿直室ですよ?」

「いるって聞いたから、来たの。」

「はあ?いるって聞いても、来たらダメでしょ。」

先生は眠い目を擦った。

「ねえ、先生。さっき……」

先生の唇を見る。さっき私、その唇に口づけた。

「何ですか?俺、何かしましたか?」

覚えていない。キスした事も知らない。
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