白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
胸に何かが刺さった。

今まで側にいてくれた彼女。

やっぱりいるんだ。そういう人が。

「でも私は、先生に今幸せにして貰ってるよ。」

そう言うと先生の首筋に、顔を埋めた。

「それは良かった。」

先生は手を離すと、私の胸元を腕でくるんだ。

「やっぱり君といると、俺は癒される。」

「その言葉、私にとってはご褒美だよ。」

心が穏やかになる。

あれほど死の恐怖に怯えていた私は、どこに行ってしまったのだろう。

「先生……」

好きって言ったら、あなたはどう答えるだろう。

それは決まっている。患者とは付き合えない。

その時だった。先生が私から離れた。

「さて。俺は仕事に戻るか。」

背中がやけに肌寒く感じた。

「頑張って。仕事。」

先生は立ち上がると、微笑んでくれた。

「ありがとう。」

そう言って、私の病室を出て行った先生。

どうしよう。好きだと知ってしまった。
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