白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
「えっ?」

私は聞き返した。

「担当になった患者さんは、当然のように渡部先生に恋をしますよ。あのイケメンに親身になられたらね。」

ご多望に漏れず、私も渡部先生に恋をしているっぽい。

「でも先生は、誰とも恋をしない。仕事が恋人なんですよ。」

「そうなの?」

だんだん心が寂しくなっていく。

彼が私に親身な理由。それはただ担当医師だからという理由なのに。

「渡部先生、病院の傍に住んでいて、夜中の呼び出しも必ず来る方なんですよ。彼女にしたら、たまったもんじゃありません。」

看護師さんは、そう言って何かをメモする。

「手術、受けようかな。」

「あら、本当ですか?渡部先生の出番ですね。」

その言葉に、思わず微笑んでしまう。

「もし、渡部先生がまだナースステーションにいたら、その事伝えておきますね。」

「……はい。」

看護師さんが病室を出ると、私は布団の上でピアノを弾く真似をした。
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