白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
私は顔を上げた。

「本当は、そこまで情を挟むのは、医師として危険ですけどね。」

居ても立っても居られない。

私はベッドから抜け出した。

「どこに行くんですか?」

「渡部先生のところに。」

黒川先生は私の背中をポンと叩いた。

「案内しますよ。」

先生は親切に私を連れて廊下を歩いてくれた。

ナースステーションの傍を通り、ICUの外を通った。

そうすると、オペ室が見えて来た。

「第3オペ室。通称ダヴィンチルームです。」

中を覗くと、渡部先生が大きな機械の中に座っていた。

「先生……」

近づこうとすると、黒川先生がそれを止めた。

「黙って見てなさい。」

黒川先生に言われ、私は彼を見続けた。

ガラス越しの光の中、先生の指がゆっくりと動く。

モニターの向こうで、機械のアームがそれに応える。

美玖は息を飲んだ。

指の動きは、まるでピアノの鍵盤を押すように正確で、美しかった。
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