白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
すると看護師が、私に話しかけてきた。

「いい先生に当たりましたね。」

「そうなんですか?」

どことなく、仕事に慣れてる気がしたけれど。

「この界隈では、有名な脳外科の先生ですよ。」

脳外科?何でそんな先生が、私の担当になるの?

「私、脳が悪いんですか?」

「……どうですかね。今日MRI撮りますから、それで分かるかも。」

看護師さんはベッドの脇に、車椅子を用意してくれた。

「一人で歩けます。」

上半身を起こした時だった。

さっきの渡部先生が、私の背中をそっと支えてくれた。

「途中で倒れでもしたら、大変ですから。」

「私、そんなに悪いんですか?」

渡部先生は、小さなため息をついた。

「昨日の夜、救急で運ばれたんですよ?今日ぐらい大人しくしててください。」

「はい。」

私は大人しく、車椅子に乗った。

「いいですか。帰りも車椅子ですからね。」
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