白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
「先生、彼女は俺の患者です。」

黒川先生が苦笑する。

「そんなに構えるなって。仲良くしてるだけだよ。」

そう言って部屋を出て行く黒川先生を、渡部先生は見つめる。

そしてくるっと振り返った渡部先生は、私にこう告げた。

「美玖さんも、他の人に気安く名前を呼ばせないで。」

ドキッとした。

美玖さんって、名前を呼ばれ。

しかも軽く嫉妬している。

私はニヤつくのを抑えきれなかった。

「先生……嫉妬ですか?」

「……言うな。直ぐ収まる。」

病状のように言った先生に、私はクスクス笑った。

それを渡部先生が、微笑みながら見ている。

「えっ?」

「敵わないな。君の笑顔には。」

その声が、私の心の奥の弦を優しく弾いた。

ピアノでも出せない音が、胸の中に響いた。

先生の瞳が、私を見つめる。

それはあたかも、Andante con tenerezza(歩くように、優しく)だった。
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