白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
なのに先生の一言は、それを引き裂くものだった。

「美玖さん、もう病室に戻って。」

「えっ……」

「俺ももう、家に帰るから。」

そう言って私に背中を向けた先生が、どこか寂し気だった。

そっと捕まえて、後ろから抱きしめた。

「また、会いに来てもいい?」

「ダメだ。ここは患者が来るところじゃない。」

「会いたいの。先生に。」

私がぎゅっと先生を抱きしめる。

すると先生は私の手を掴んだ。

「練習してるところ、美玖さんに見られたくないんだ。」

なんだかその言葉が可愛らしくて、ゆっくりと彼の背中から離れた。

「そうだよね。私も練習してるところ、あんまり人に見られたくない。」

「そうだろ。」

先生が振り返って微笑んだ。

「やっぱり俺達、似ているよ。」

その言葉が優しく私を包んでくれた。

「先生。」

「ん?」

「……ありがとう。」

涙を堪えてそう伝えた。
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