白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
「どうしたら、分かるんでしょうね。女心。」

篠田先生は、楽しそうに顔を手で覆う。

「知りたい人でもいるんですか。」

「はい。めちゃくちゃその人の心を、知りたいです。」

そう言うと篠田先生は、俺の背中をパンと叩いた。

「誰?その人。俺が仲介してやるよ。」

俺は少しだけ笑った。

「言ったら、叱られますよ。」

篠田先生は俺の手元のカルテが、三島さんから美玖に変わった事を知った。

「天音さん。」

俺はカルテをめくる手を止めた。

「彼女、先生と感性が似てますよね。」

「……そうですかね。」

俺は少しだけ振り向くと、自分に言い聞かせるように言った。

「分かってるんです。恋してはいけない相手だと。」

「それは、患者だから?それとも天才ピアニストだから?」

篠田先生の言葉に、心が揺れた。

「医師だって、一人の人間です。恋することもあるでしょう。」
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