白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
すると美玖は、照れたような笑いをした。

「だって、悠真先生ばっかり美玖って呼んで、ずるいもん。」

「ずるい?」

「私だって、悠真先生って呼ぶ。」

そっと彼女の手に触れた。

これ以上、触れてはいけない。

恋してはいけない人。

そう、自分に言い聞かせる。

「そうだ。今日は、ピアノ弾かないの?」

「弾いてるわよ。聞く?」

すると彼女はロールピアノを開いて、USBの線を入れた。

「今日もショパン?」

「ははは。じゃあ、ご希望通りに。」

そして彼女の指が、音楽を奏でる。

「これ、聞いたことある。」

「ノクターン第2番よ。」

CDで聞いた音楽が今、彼女の生演奏で聞ける。

なんて贅沢なんだろう。

目を瞑るとまるで、美玖がドレスを着てコンサートの舞台に立っているようだ。

「優しくて、繊細だね。」

「そう。なんか悠真先生っぽいでしょ。」

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