深夜2時、コンビニにて。
「すみません。不摂生のオールスターズすぎて、思わず」

手の甲を口に当てて、フルフル肩を震わせている。

まさか、話しかけられると思わず、呆然とそれをみていると、

「でも、このスイーツ、美味しいですよね。俺も好きです」

キラッキラした笑顔を向けられた。

(わっ……)
 
……笑顔、眩し。
フラれたばかりのこの荒んだ心には刺激が強すぎる。
深夜テンションで放たれるキラースマイル、攻撃力MAX。

「……なんか、嫌なことでもあったんですか?」

「っ」

ぐさっ。

ええ、ありましたとも。
ヤッた後にフラれましたとも。
さっき。ほんの数十分前に。

視線を落とす。

目の前の"現実逃避セット"が急に惨めに見えてきた。
 
さっきまで、奴と過ごした甘かった時間を思い出してしまって――

(ああ、もう、やだ。)

ぐずっと声が詰まる。

そして――コンビニの蛍光灯の下で、楓はとうとう泣いてしまった。

「うう〜〜〜っ」

年甲斐もなく、レジ前にて大号泣。

楓の嗚咽が、店内の静けさを引き裂く。
その様子に、目の前の青年店員は、目を丸くして、固まった。
どうすればいいのか分からず、レジに通す手はカゴの上で止まり、口を半開きにしている。

その様子にハッと我にかえる。

あ、やばっ。
 
店員くんと視線が合う。気まずすぎる……。

「……え、あっ……えっと、とりあえず……袋、分けますか?」

声が少し震えていた。
そりゃそうだ、客がレジ前で号泣してるんだから。

涙でマスカラがにじんだまま、楓は鼻をすすった。
深夜2時のコンビニ。
客は自分ひとりなのが唯一の救い。

「……べつに。どうでもいいです。全部いっしょで」

「…はい」

少し考えた店員は、棚の下からポケットティッシュを取り出し、そっと差し出した。

「サービスです」

「…………ありがとうございます」

ティッシュを受け取る手が震えた。
こんな変な女に差し出されるその優しさが、逆に沁みて痛い。

でも、それだけで終わらなかった。

「ちょっと待っててください」

「……?」

彼は奥から紙パックのココアを取り出した。

「これ、期限近いんで廃棄になるやつです。温めると、甘くて少しだけ救われますよ」

「……。」

もうほんと、やめて。
そういうの。また涙出ちゃうから。

店員はこちらを見ながら、ふっと柔らかく微笑んだ。

「やっぱり……なんか、あったんですよね?」

もう、なんでまた聞くかな。
優しくされた後。答えない方が失礼な気がして、視線をカゴに向けながらポツリ。

「………察してるかと思いますけど、彼氏にフラれたんです。先程。」

「……ああ、なるほど」


ふってきたその声は、

なぜか、

――ちょっと弾んでた。
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