君を守る契約
マンションへ慌てて帰るがエンジンを切ったあとも、しばらく車から降りられなかった。もしかしたら、という予感が胸の奥で嫌な音を立てて軋んでいる。
鍵を開けて、玄関に入るが静かだ。いつもの温かい空気は微塵も感じられず無機質なものに変わっていた。
「琴音?」
返事はない。リビングに入って、違和感が確信に変わる。
彼女の私物が、綺麗に消えている。
そして机の上に、白い封筒が一通置かれていた。震える手でその封を開けると、中に入っていたのは離婚届だった。
彼女の名前だけがすでに記入されているのを見て言葉を失った。そこには“松永琴音“と書かれている。数日前まで彼女とここで暮らして彼女がこんなことを考えているなんて想像もしていなかった。
スマートフォンをもう一度掴む。
【琴音】
既読は、つかない。
【話をしよう】
それでも、沈黙。
書類を握る手に、力が入る。あの彼女がここまでするなんて何があったのだろうか。何が彼女をここまで追い詰めてしまったのだろうか。俺は頭を抱えてしまう。契約という言葉に甘えて、ちゃんと向き合えていなかったのかもしれない。
何より俺は契約ではなく本心から琴音を大切に思っているのに伝える術はもうなくなってしまった。
白い封筒を机に置いたまま、誰もいない部屋で深く息を吐いた。
「……終わりだなんて、勝手に決めないでくれよ」
低く呟く声は、部屋に吸い込まれて消えた。
彼女が何かを隠している気はしていた。“これ以上迷惑をかけられない“という言葉が引っ掛かっっていた。幸也くんのことはもう解決すみだ。今度は何に彼女が悩んでいるのだろうか。
探す。
必ず、見つける。
白い紙一枚で、終われる関係じゃない。
もう一度、今度はちゃんと琴音の手を繋ぎ止めたいと俺は静かに拳を握った。
鍵を開けて、玄関に入るが静かだ。いつもの温かい空気は微塵も感じられず無機質なものに変わっていた。
「琴音?」
返事はない。リビングに入って、違和感が確信に変わる。
彼女の私物が、綺麗に消えている。
そして机の上に、白い封筒が一通置かれていた。震える手でその封を開けると、中に入っていたのは離婚届だった。
彼女の名前だけがすでに記入されているのを見て言葉を失った。そこには“松永琴音“と書かれている。数日前まで彼女とここで暮らして彼女がこんなことを考えているなんて想像もしていなかった。
スマートフォンをもう一度掴む。
【琴音】
既読は、つかない。
【話をしよう】
それでも、沈黙。
書類を握る手に、力が入る。あの彼女がここまでするなんて何があったのだろうか。何が彼女をここまで追い詰めてしまったのだろうか。俺は頭を抱えてしまう。契約という言葉に甘えて、ちゃんと向き合えていなかったのかもしれない。
何より俺は契約ではなく本心から琴音を大切に思っているのに伝える術はもうなくなってしまった。
白い封筒を机に置いたまま、誰もいない部屋で深く息を吐いた。
「……終わりだなんて、勝手に決めないでくれよ」
低く呟く声は、部屋に吸い込まれて消えた。
彼女が何かを隠している気はしていた。“これ以上迷惑をかけられない“という言葉が引っ掛かっっていた。幸也くんのことはもう解決すみだ。今度は何に彼女が悩んでいるのだろうか。
探す。
必ず、見つける。
白い紙一枚で、終われる関係じゃない。
もう一度、今度はちゃんと琴音の手を繋ぎ止めたいと俺は静かに拳を握った。