君を守る契約
里美の部屋では、夕方になるとキッチンに温かい匂いが立ちのぼる。

「今日は消化にいいやつね」

そう言って里美が作ってくれたのは、野菜たっぷりのスープと、柔らかく煮た鶏肉。
私はテーブルにつきながら、思わず苦笑した。

「なんだか……お母さんみたい」

「失礼ね。まだその歳じゃないわよ」

そう言いながらも、里美はどこか誇らしげだった。

食後、ソファに並んで座り、里美は私のお腹にちらりと視線を向ける。

「……大きくなったね」

「うん。最近、動くのがよくわかるようになってきて」

「そっか。楽しみだね」

里美は彼のことを詮索するようなことはしない。でもこの子が生まれて来るのを楽しみにしてくれているのがわかって嬉しい。生まれてくるのを望まれているとこの子に感じてもらいたい。
里美は私と一緒に母親教室のパンフレット、出産後の行政サポート、保育園の空き状況などを調べてくれる。彼女の現実的な一面に私も冷静に今後のことを考えることができありがたい。

「琴音が一人で抱える必要はないからね。一緒に考えていこう」

その言葉に、胸の奥がじんとした。

「ありがとう……」

「そんなこといいんだよ。今はそれより、ちゃんと食べて、ちゃんと寝ること」

そう言われて、私は素直に頷いた。
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