君を守る契約
病院を出ると彼の車にはベビーシートが装着されていた。私も里美も車を持っていないので用意していなかったのに、とそれを見ていると、

「ネットで色々調べて決めたんだ。この子が気に入ってくれるといいんだけど」

彼は少し恥ずかしそうにそう言い、私はそっとベビーシートに寝かせた。彼はイメージトレーニングをしてきたといい、手慣れた様子でシートベルトをかける。

「うん、大丈夫そうかな」

私は頷くと反対の扉から車に乗り込んだ。彼も運転席に乗りこむとそっと扉を閉めた。

家に戻ると、リビングの空気がやけに懐かしく感じた。
ほんの少し前まで、ここは“静かすぎる場所”だったのに、今は違う。ベビー用品が並び、部屋がカラフルに色を帯びていた。
職場からもらったと大きなバルーンギフトが飾られていたり、里美からはベビーベッドにつけるメリーがプレゼントされていてとても驚いた。

「名前が決まったらプレゼントを贈りたいってグランドスタッフのメンバーからも声をかけられたよ。白石もプレゼントしたいって言われてるんだ」

「なんだか嬉しい。あんな辞め方をしてしまって本当に申し訳なく思っていたの。だから改めてみんなにはお詫びをしたい」

「でもみんなはつわりがひどくて辞めざるを得なかったんだなって思ってくれてる。だからお詫びではなくて琴音もこの子も元気だって顔を見せに行こう」

宗介さんが優しく私の背に手を当てた。そしてその言葉に私も頷いた。
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