君を守る契約

新生活と葛藤

あの日彼の車を降りると仏壇に飾られる両親の写真に手を合わせた。

「私ね……、松永琴音になりました。金銭的に助けてもらったけど、彼はすごく優しい人みたい。それにね、空港で見かける彼はすごくかっこいいの。だから決して不幸ではないよ。お父さんもお母さんも見守っていてね」

線香の香りがいっそう穏やかな気持ちにさせてくれる。
よし、と自分に気合を入れて立ち上がった。
1週間後には彼のマンションに引っ越しをしなければならない。私の部屋としてもらえるところは確認してきたが、今の部屋よりもずっと広かった。ベッドは引っ越しまでに購入するといってくれたので、私が持っていくのは本当に身の周りのものばかりだ。それにこのマンションを取っておけることになったのでその都度取りに来てもいいと思った。とはいえ私もシフト勤務をしており、彼の家で家事をすることも思えばある程度のものは持っていかなければならない。スーツケースやボストンバッグ、ダンボールなどに毎日仕事から帰るたびにまとめる日びを過ごした。
< 33 / 121 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop