君を守る契約
空港の朝
朝の空港はまるでひとつの都市のようなざわめきと活気に溢れている。滑走路を照らす朝日が、ガラス張りのターミナルを黄金色に染めていく。
私は制服のスカーフを整えながらゲートの前に立った。
「おはようございます。搭乗券を拝見いたします」
笑顔を絶やすことなく、多くの乗客の対応にあたる。時間に追われ、仕事内容も多岐に渡り楽な訳ではない。それでもこの仕事は毎日が充実していた。
この8年間、ずっと立ち止まることなく気を張り詰めっぱなしだった。
大学を卒業してすぐ、私はここで働き始めた。あの葬儀の日に決めた“幸也を自分の手で育てる“という約束を守るために朝は5時に起き
弁当と朝食を作り、弟を送り出してから出勤する。授業参観、運動会、入学式や卒業式、イベントは可能な限り全て出てきた。若い私に訝しげな視線を向ける人もいたが、幸也は私を見ると嬉しそうに手を振ってくれる。そんな弟が可愛くないわけがない。幸也のためならどんなに忙しくても頑張ろうと思えた。
熱を出した日もあった。仕事が抜けられず、昼休みにこっそり電話をかける。
「薬飲んだ? ご飯は食べられそう? ちゃんと寝てる?」
矢継ぎ早な質問に、少し熱のこもったような声で、
「大丈夫。ちゃんと寝てるよ。ご飯も少しだけど作ってくれたおかゆを食べた」
その幼い声を聞きながら私は胸の奥が熱くなり、思わず涙がこぼれそうになった。
洗濯物やプリント、残業……眠る時間を削っても幸也との生活を守りたかった。中学、高校と年齢を重ねるごとに家事も分担してくれるようになりだいぶ楽になったが、少し寂しさもあった。
私は制服のスカーフを整えながらゲートの前に立った。
「おはようございます。搭乗券を拝見いたします」
笑顔を絶やすことなく、多くの乗客の対応にあたる。時間に追われ、仕事内容も多岐に渡り楽な訳ではない。それでもこの仕事は毎日が充実していた。
この8年間、ずっと立ち止まることなく気を張り詰めっぱなしだった。
大学を卒業してすぐ、私はここで働き始めた。あの葬儀の日に決めた“幸也を自分の手で育てる“という約束を守るために朝は5時に起き
弁当と朝食を作り、弟を送り出してから出勤する。授業参観、運動会、入学式や卒業式、イベントは可能な限り全て出てきた。若い私に訝しげな視線を向ける人もいたが、幸也は私を見ると嬉しそうに手を振ってくれる。そんな弟が可愛くないわけがない。幸也のためならどんなに忙しくても頑張ろうと思えた。
熱を出した日もあった。仕事が抜けられず、昼休みにこっそり電話をかける。
「薬飲んだ? ご飯は食べられそう? ちゃんと寝てる?」
矢継ぎ早な質問に、少し熱のこもったような声で、
「大丈夫。ちゃんと寝てるよ。ご飯も少しだけど作ってくれたおかゆを食べた」
その幼い声を聞きながら私は胸の奥が熱くなり、思わず涙がこぼれそうになった。
洗濯物やプリント、残業……眠る時間を削っても幸也との生活を守りたかった。中学、高校と年齢を重ねるごとに家事も分担してくれるようになりだいぶ楽になったが、少し寂しさもあった。