君を守る契約
縮まる距離
12月の街は、どこもかしこも光で溢れていた。
空港のロビーも例外ではなく、出発カウンターの横に飾られた大きなツリーが冷たい空気の中でキラキラと瞬いていた。
年末が近づくと、私たちの仕事は一気に繁忙期を迎える。
朝は夜明け前から、帰宅は深夜近く。
宗介さんも連日フライトに出ており、顔を合わせる時間もわずかだった。
今日はクリスマスイブだというのに慌ただしく、チェックインカウンターも搭乗口も、最後の便を見送るスタッフでまだ騒がしい。
ここ最近は残業続きだったが、今日はいつもよりはほんの少しだけ早く帰ることができたので、慌ててスーパーに滑り込んだ。
最近の忙しさにつかれているであろう宗介さんに何か作ってあげたい、そんな一心だった。
マンションに戻るころにはすっかり手がかじかみ、冷たい鍵を回すと真っ暗な部屋の中に小さな静けさが広がる。
暖房をつけ、コートを脱ぐとそのままキッチンに立った。
フライパンにバターを落とすと、じゅうっと音が響く。チキンの表面が少しずつこんがりと色づいていく。
横では鍋に牛乳を注ぎ、野菜を柔らかく煮込む。シチューは我が家の冬の定番。幸也が小さいころから、寒い夜にはいつも作ってきた味だ。テーブルを整え終わる頃、ちょうど玄関の鍵が回る音がした。「おかえりなさい」と玄関に向かって声をかけた。
「……すごい。いい匂いだな」
彼がコートを脱ぎながらリビングに入ってきた。出来上がったばかりのシチューの火を止め、エプロン姿のままくるりと振り返ると、宗介さんはドアのところに立ち尽くしていた。
「クリスマスらしくはないですけど……せめて、温かいものをと思って」
「いや、充分だよ。こんな光景が、帰ってきたときにあるなんて、夢みたいだ」
その言葉に、胸が熱くなった。彼の目に、少しだけ疲れの色が滲んでおり、忙しいフライト続きの毎日で食事も不規則なはず。最近はお弁当もだが、夕飯も共にすることがなかった。
だからこそ、今日はせっかく一緒に夕飯を食べれそうなシフトだったので、彼にホッとしてもらえるような食事にしたかった。
二人でシチューをよそい、チキンを切り分け、湯気に包まれたテーブルを挟んで向かい合う。他にはサラダとパンしかない食卓だが不思議と心は満たされていく。
空港のロビーも例外ではなく、出発カウンターの横に飾られた大きなツリーが冷たい空気の中でキラキラと瞬いていた。
年末が近づくと、私たちの仕事は一気に繁忙期を迎える。
朝は夜明け前から、帰宅は深夜近く。
宗介さんも連日フライトに出ており、顔を合わせる時間もわずかだった。
今日はクリスマスイブだというのに慌ただしく、チェックインカウンターも搭乗口も、最後の便を見送るスタッフでまだ騒がしい。
ここ最近は残業続きだったが、今日はいつもよりはほんの少しだけ早く帰ることができたので、慌ててスーパーに滑り込んだ。
最近の忙しさにつかれているであろう宗介さんに何か作ってあげたい、そんな一心だった。
マンションに戻るころにはすっかり手がかじかみ、冷たい鍵を回すと真っ暗な部屋の中に小さな静けさが広がる。
暖房をつけ、コートを脱ぐとそのままキッチンに立った。
フライパンにバターを落とすと、じゅうっと音が響く。チキンの表面が少しずつこんがりと色づいていく。
横では鍋に牛乳を注ぎ、野菜を柔らかく煮込む。シチューは我が家の冬の定番。幸也が小さいころから、寒い夜にはいつも作ってきた味だ。テーブルを整え終わる頃、ちょうど玄関の鍵が回る音がした。「おかえりなさい」と玄関に向かって声をかけた。
「……すごい。いい匂いだな」
彼がコートを脱ぎながらリビングに入ってきた。出来上がったばかりのシチューの火を止め、エプロン姿のままくるりと振り返ると、宗介さんはドアのところに立ち尽くしていた。
「クリスマスらしくはないですけど……せめて、温かいものをと思って」
「いや、充分だよ。こんな光景が、帰ってきたときにあるなんて、夢みたいだ」
その言葉に、胸が熱くなった。彼の目に、少しだけ疲れの色が滲んでおり、忙しいフライト続きの毎日で食事も不規則なはず。最近はお弁当もだが、夕飯も共にすることがなかった。
だからこそ、今日はせっかく一緒に夕飯を食べれそうなシフトだったので、彼にホッとしてもらえるような食事にしたかった。
二人でシチューをよそい、チキンを切り分け、湯気に包まれたテーブルを挟んで向かい合う。他にはサラダとパンしかない食卓だが不思議と心は満たされていく。