君を守る契約
年の瀬の空港は、いつもよりさらにざわめきが大きい。帰省客でいっぱいのロビーは人の流れが絶えず、アナウンスの声とキャリーケースの音が響いている。
自動ドアが開くたびに、外の冷たい風が頬を撫でた。私が到着口の掲示板を見上げると仙台からの便は予定より五分遅れのようだ。
ついこの前会ったばかりなのに、幸也に会えると思うとどうしてもウキウキしてしまう。
“ついたら連絡する”とだけ送られてきた幸也からのメッセージ。
そのため手にスマートフォンを握りしめ、何度も確認してしては出口に目を凝らしてしまう。

去年の今ごろは、一人で年を越す準備をしていた。それが今は、迎える家があり、待つ人がいる。たったそれだけのことなのに、胸の奥がじんわりと温かくなる。
到着ゲートの扉が開き、乗客たちが一斉に流れ出してくる。
その中に見慣れたシルエットを見つけた瞬間、思わず手を振っていた。

「姉ちゃん!」

人混みを抜けて、幸也が笑顔で小走りに駆け寄ってきた。
厚手のコートの襟を立て、肩にはリュック。大学生らしいラフな格好だけれど、どこか大人びて見える。

「寒かったでしょ。こっち、荷物持つね」

「ううん、大丈夫。ほら、こっちも空いてるから」

幸也と並んで歩き出す。ふと横顔を見ていると、懐かしさと安心感で胸いっぱいに広がった。

「宗介さん、今日は遅番なんだよね?」

「うん。たぶん帰りは夜の十一時過ぎかな。一緒に年を越せるかは、ちょっと微妙かも」

「そっか。でも、会えるだけでもいいよ。姉ちゃん、幸せそうだもん」

「え?」

幸也の言葉に思わず足を止めた。
彼は照れくさそうに笑って、前を向いたまま続けた。

「顔が全然違う。前より、優しい顔してる」

その言葉が、胸の奥にゆっくり沁みていった。外は冷たい風が吹いているのに、心の中は不思議と温かかった。
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