君を守る契約
22時を過ぎた頃宗介さんから連絡が入る。
【無事に定刻で到着をした。申し送りも終わったので今から帰る】
【お疲れ様です。気をつけて帰ってきてください】
彼にそう返信すると幸也に向かい声をかける。
「宗介さん無事に到着したみたいだからあと30分くらいで帰ってくるよ」
「かっこいー。パイロットって響きもいいよな。姉ちゃんもCAならよかったのに」
「無理に決まってるでしょ。私は地上が合っているからいいのよ」
そう言うとソファから立ち上がり、ダイニングテーブルに卓上コンロを準備し始めた。彼の部屋にはなかったので私の家から持ち込んだ使い古しのコンロがこの部屋に全然合っていない。でも鍋に火をかけるとジュウッと音を立てて牛脂が溶け出し、甘辛いタレの香りが広がる。
冬の夜にぴったりな音と匂いに、心まで温かくなる。
「姉ちゃん、やっぱりこの匂い最高だなぁ」
「お正月前の特別だからね」
子どもの頃、両親と4人で食べたあのすき焼きを思い出す。懐かしいけれど、今は違う。
今の私の隣には、成長した弟がいて、そして宗介さんがいる。
野菜や肉を煮込み始めた頃、玄関の方でカチャリと音がした。
「ただいま」
少し慌てたよう黒いコートを脱ぎながらリビングに入ってきた彼は私と目が合うとふっと表情が緩んだ。そして幸也の顔を見ると、
「よく来てくれた。待たせて悪かったな」
そう言いながらネクタイを少し緩めているその姿が、なんだかホッとした表情に見える。
「おかえりなさい。お邪魔しています」
ペコリと頭を下げた幸也はまだ少し硬い口調だが、それでも表情は先日仙台であった時より柔らかかった。
「お帰りなさい。間に合いましたね」
「間に合ったよ。……ああ、いい匂いだな」
宗介さんの目がテーブルの上の鍋に止まる。
「ちょうどそろそろ煮えますから座ってください」
私は卵を割り入れた皿をテーブルに運ぶ。
宗介さんが座ると、幸也は少し緊張したように箸を持った。
【無事に定刻で到着をした。申し送りも終わったので今から帰る】
【お疲れ様です。気をつけて帰ってきてください】
彼にそう返信すると幸也に向かい声をかける。
「宗介さん無事に到着したみたいだからあと30分くらいで帰ってくるよ」
「かっこいー。パイロットって響きもいいよな。姉ちゃんもCAならよかったのに」
「無理に決まってるでしょ。私は地上が合っているからいいのよ」
そう言うとソファから立ち上がり、ダイニングテーブルに卓上コンロを準備し始めた。彼の部屋にはなかったので私の家から持ち込んだ使い古しのコンロがこの部屋に全然合っていない。でも鍋に火をかけるとジュウッと音を立てて牛脂が溶け出し、甘辛いタレの香りが広がる。
冬の夜にぴったりな音と匂いに、心まで温かくなる。
「姉ちゃん、やっぱりこの匂い最高だなぁ」
「お正月前の特別だからね」
子どもの頃、両親と4人で食べたあのすき焼きを思い出す。懐かしいけれど、今は違う。
今の私の隣には、成長した弟がいて、そして宗介さんがいる。
野菜や肉を煮込み始めた頃、玄関の方でカチャリと音がした。
「ただいま」
少し慌てたよう黒いコートを脱ぎながらリビングに入ってきた彼は私と目が合うとふっと表情が緩んだ。そして幸也の顔を見ると、
「よく来てくれた。待たせて悪かったな」
そう言いながらネクタイを少し緩めているその姿が、なんだかホッとした表情に見える。
「おかえりなさい。お邪魔しています」
ペコリと頭を下げた幸也はまだ少し硬い口調だが、それでも表情は先日仙台であった時より柔らかかった。
「お帰りなさい。間に合いましたね」
「間に合ったよ。……ああ、いい匂いだな」
宗介さんの目がテーブルの上の鍋に止まる。
「ちょうどそろそろ煮えますから座ってください」
私は卵を割り入れた皿をテーブルに運ぶ。
宗介さんが座ると、幸也は少し緊張したように箸を持った。