君を守る契約
「宗介さんはいつも初詣はどこに行くんですか?」

幸也は何の気なしにお雑煮を食べながら話しかけていた。

「あんまり行かないかな。混んでるし、それに仕事のことも多くて」

「そうなんですね」

「幸也くんは行ってるのか?」

「そうですね。姉ちゃんと大抵近くの神社に行ってます。そろそろ彼女と行きたいんですけど、今の所相手がいなくて」

そう笑いながら話す幸也に、宗介さんもつられて笑っていた。

「せっかくだし今年は行ってみるか?」

「いいですね。でも……うわぁ、今年もまた家族と行くのか。情けないなぁ」

幸也が大袈裟に頭を抱えるのを見て私もクスクス笑った。
家族で初詣、いいじゃない。
そう思った瞬間に「違う」と頭の中で訂正する声が聞こえた気がした。家族じゃない、偽装家族だと鳴り響く。

「俺はいいけど、宗介さんも姉ちゃんもふたりで行きたいんじゃない?」

幸也は不意に気を使ったのかそんなことを言ってくる。すると宗介さんは笑いながら、

「家族になった初めての初詣だ。みんなで行こうか」

そう言って私の方を向くと小さく頷いていた。家族って彼の口から出て、私の胸はギュッと掴まれたようになる。偽装かもしれないけど、それでもグッと込み上げてくるものがあった。今だけでもこの関係でいたいと願いたくなった。
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