君を守る契約
年明けから数日、空港は閑散期に入るどころか予想以上の混雑で、地上も空もバタバタしていた。
宗介さんは毎日のように長距離便の担当、私はシフトがずれこんでほとんど顔を合わせられない日が続いた。
朝早く家を出て、帰宅したら彼はいない。
夜遅く帰ってきた彼は、私が眠ったあとにそっとシャワーを浴び、また翌朝には私が出た後に彼は起き出すすれ違いの日々が始まっていた。
でも、たったひとつだけ変わらなかったものがある。それは彼に望まれて作るお弁当。
午前のブリーフィングの最後、資料の影に隠すようにして宗介さんからメッセージが届く。

【今日もありがとう。いただきます】

短くて、仕事の合間のほんの一言なのに胸がきゅっとなる。
仕事の合間に作るお弁当は決して手が込んだものばかりでなく、残り物や簡単なものばかりが入っている。それでも彼は気にしないから私の無理のない範囲で作ってほしいと頼まれた。もちろん以前から自分のお弁当を作っていたこともあり、無理ではない。
今日は照り焼きチキンと卵焼き、それに残り物のカボチャサラダとひじきの煮物だ。
直接会う時間はなくても、彼は必ず食べる時にメッセージをくれる。その心遣いに私は日々彼に感謝の気持ちが強くなった。そして私の作るお弁当を喜んでくれるのだと思うと心が穏やかになるのを感じた。
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