君を守る契約
彼は私が事務所に入ってきたことに気がついていたようでゆっくり私の前まで来る。

「ごめん、大丈夫か?」

「はい。でも……すみません、私のせいで……」

トラブルと言うには小さなことかもしれないが、一緒に乗務するからクルーもいるだろうからあまり関係を悪くしないほうがいいのではないかと思う。何も聞かなかったように穏便に済ませるのが最良だったのではないかと思う。でも彼が私の味方をしてくれたことが心の底から嬉しい。

「俺が琴音のお弁当を食べたいのは本当のことだから」

胸に、熱くて甘い何かが落ちた。

「だから……気にしなくていい。俺がちゃんと守るから」

まっすぐな目がなんだか優しくて職場にいるのに家と同じ優しい表情だった。


「……はい」

ふっと笑うと、宗介さんは食べ終わったばかりの弁当箱を胸の前に少しだけ掲げた。

「今日も、美味しかったよ」

その一言がすれ違っていた日々の寂しさまでそっと溶かしてくれる気がした。
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