君を守る契約
甘い指先とほどけた心
冬の日暮れは早い。
バレンタイン当日だというのに、空港はいつも以上に冷え込んでいた。
今日は珍しく私も宗介さんも早番。ふたりとも夕方に家に戻れるのは久しぶりのことだった。
玄関ドアの開く音が聞こえてきたので私はリビングから顔を出した。
「おかえりなさい」
「ただいま」
宗介さんは、黒い紙袋を片手に立っていた。普段の彼らしくない、少しだけそわそわしたような表情をしている。そして私にそれを差し出してきた。
「バレンタインだから……ケーキを買ってみた」
袋から出てきたのは、小さな箱。開けると小ぶりなのに濃厚そうなチョコレートケーキがふたつ入っていた。大人っぽいビターな香りがふわりと広がる。
「わぁ、すごく美味しそう」
「仕事帰りに並んだんだ。恥ずかしかったけど……まぁ、年に一度だからな」
照れたように言う彼を見て、なんだか胸がじんわりと熱くなった。こういう小さな気遣いが、心に静かに沁みる。
夕食は久しぶりにふたりの時間が揃ったのでいつもより少しだけ品数が多い。ほうれん草の白和え、鮭のムニエル、茶碗蒸しにマカロニサラダ。
「こんな夕飯、久しぶりだな」
「そうですね。宗介さんにゆっくり食べてもらえるのが嬉しいです」
ふたりで同じ皿に手を伸ばし、小さな笑いがこぼれる。何気ない会話を向かいあってする。こんな些細なことでさえも穏やかな気持ちになる。
バレンタイン当日だというのに、空港はいつも以上に冷え込んでいた。
今日は珍しく私も宗介さんも早番。ふたりとも夕方に家に戻れるのは久しぶりのことだった。
玄関ドアの開く音が聞こえてきたので私はリビングから顔を出した。
「おかえりなさい」
「ただいま」
宗介さんは、黒い紙袋を片手に立っていた。普段の彼らしくない、少しだけそわそわしたような表情をしている。そして私にそれを差し出してきた。
「バレンタインだから……ケーキを買ってみた」
袋から出てきたのは、小さな箱。開けると小ぶりなのに濃厚そうなチョコレートケーキがふたつ入っていた。大人っぽいビターな香りがふわりと広がる。
「わぁ、すごく美味しそう」
「仕事帰りに並んだんだ。恥ずかしかったけど……まぁ、年に一度だからな」
照れたように言う彼を見て、なんだか胸がじんわりと熱くなった。こういう小さな気遣いが、心に静かに沁みる。
夕食は久しぶりにふたりの時間が揃ったのでいつもより少しだけ品数が多い。ほうれん草の白和え、鮭のムニエル、茶碗蒸しにマカロニサラダ。
「こんな夕飯、久しぶりだな」
「そうですね。宗介さんにゆっくり食べてもらえるのが嬉しいです」
ふたりで同じ皿に手を伸ばし、小さな笑いがこぼれる。何気ない会話を向かいあってする。こんな些細なことでさえも穏やかな気持ちになる。