君を守る契約
私はそっと息を吸った。
「私が嫌って言ったら止めますか?」
震える声で俯きながらも勇気をふり絞って言うと彼は明らかに息を呑んだ。
「当然だろ、そんなの」
「じゃ、嫌じゃなかったら?」
空気がピンと張り詰める。そして彼の喉がなり、そっと膝の上に乗った私の手に彼の手が重なった。
「琴音、本当にいいのか?」
彼の声は自制と欲望の間で揺れるようだった。そして緊張しているような硬さもあった。私は彼の手から感じる温もりに励まされるように小さく頷いた。
その瞬間、彼の手はそっと離れ、次の瞬間には私の頬を包みこまれていた。
「触れるだけでこんなに苦しいのは初めてだ」
彼はそっと私の様子を伺うように距離を詰めてきた。そしてゼロになると私たちの唇は重なった。最初は本当にそっと触れるだけのキス。それなのに一度触れたらふたりとも止まらなかった。そして徐々に深まり、頬に添えられていた彼の手は私の背中に周り、私の手も彼の背中にしがみつくようにセーターを握り締めていた。お互いの形を確かめ合うように角度を変え、彼に求められる。それに私の胸がギュッと締め付けられる。
「ごめん、もう本当に止められそうにない……」
「……止めないで」
それを聞いた瞬間、彼の瞳の奥で理性が静かに崩れ落ちた。彼は私を抱き上げると彼の寝室へ向かった。
寝室に入るといつもの彼の匂いが胸を満たす。ベッドにそっと下ろされると彼は私の上に覆い被さってきた。見上げた彼はといつもの穏やかさとは違う、どこか切ないほどの熱を帯びた表情をしていた。その表情が胸の奥を強く締め付ける。それは今まで見たこともないほどに魅力的で私が思わず手を伸ばすと、彼はその手に口づけをし、そして再び唇を重ねてきた。
彼の手はあっという間に私の服を取り去ると、自分も脱ぎ捨てていた。直接触れ合う体温が身も心も温めてくれる。彼は私の体をなぞるように触れ、その全てが敏感になり息をするだけで胸が震える。
「ん、あぁ……」
押し殺した声が漏れ、耳元で彼の呼吸が熱を帯びていく。
「琴音……琴音……」
何度も私の名前を呼ぶ彼の苦しくて、切ない声が耳に届く。
「そ、宗介さん……」
私が名前を呼ぶと抱きしめる腕に力をこめ、どうすればいいのか迷うように私を求めた。夜が深まるほどに境界は曖昧になり、どこまでが自分でどこまでが彼なのかわからなくなる。
契約で始まった夫婦なのに体を重ねるなんて、と頭では思っていても感情は抑えきれなかった。それは彼も同じなのかもしれない。
何度も名前を呼ばれても私を好きだと言う言葉はなかった。触れられる全ては優しいのに、大切な言葉はなかった。それが全てだ。
でも、それでも私はよかった。私は彼にどうしようもなく惹かれてしまったから。彼の腕の中で包み込まれ、これほど幸せな気持ちになれた夜は初めてだった。
「私が嫌って言ったら止めますか?」
震える声で俯きながらも勇気をふり絞って言うと彼は明らかに息を呑んだ。
「当然だろ、そんなの」
「じゃ、嫌じゃなかったら?」
空気がピンと張り詰める。そして彼の喉がなり、そっと膝の上に乗った私の手に彼の手が重なった。
「琴音、本当にいいのか?」
彼の声は自制と欲望の間で揺れるようだった。そして緊張しているような硬さもあった。私は彼の手から感じる温もりに励まされるように小さく頷いた。
その瞬間、彼の手はそっと離れ、次の瞬間には私の頬を包みこまれていた。
「触れるだけでこんなに苦しいのは初めてだ」
彼はそっと私の様子を伺うように距離を詰めてきた。そしてゼロになると私たちの唇は重なった。最初は本当にそっと触れるだけのキス。それなのに一度触れたらふたりとも止まらなかった。そして徐々に深まり、頬に添えられていた彼の手は私の背中に周り、私の手も彼の背中にしがみつくようにセーターを握り締めていた。お互いの形を確かめ合うように角度を変え、彼に求められる。それに私の胸がギュッと締め付けられる。
「ごめん、もう本当に止められそうにない……」
「……止めないで」
それを聞いた瞬間、彼の瞳の奥で理性が静かに崩れ落ちた。彼は私を抱き上げると彼の寝室へ向かった。
寝室に入るといつもの彼の匂いが胸を満たす。ベッドにそっと下ろされると彼は私の上に覆い被さってきた。見上げた彼はといつもの穏やかさとは違う、どこか切ないほどの熱を帯びた表情をしていた。その表情が胸の奥を強く締め付ける。それは今まで見たこともないほどに魅力的で私が思わず手を伸ばすと、彼はその手に口づけをし、そして再び唇を重ねてきた。
彼の手はあっという間に私の服を取り去ると、自分も脱ぎ捨てていた。直接触れ合う体温が身も心も温めてくれる。彼は私の体をなぞるように触れ、その全てが敏感になり息をするだけで胸が震える。
「ん、あぁ……」
押し殺した声が漏れ、耳元で彼の呼吸が熱を帯びていく。
「琴音……琴音……」
何度も私の名前を呼ぶ彼の苦しくて、切ない声が耳に届く。
「そ、宗介さん……」
私が名前を呼ぶと抱きしめる腕に力をこめ、どうすればいいのか迷うように私を求めた。夜が深まるほどに境界は曖昧になり、どこまでが自分でどこまでが彼なのかわからなくなる。
契約で始まった夫婦なのに体を重ねるなんて、と頭では思っていても感情は抑えきれなかった。それは彼も同じなのかもしれない。
何度も名前を呼ばれても私を好きだと言う言葉はなかった。触れられる全ては優しいのに、大切な言葉はなかった。それが全てだ。
でも、それでも私はよかった。私は彼にどうしようもなく惹かれてしまったから。彼の腕の中で包み込まれ、これほど幸せな気持ちになれた夜は初めてだった。