君を守る契約
そしてスマートフォンの通知音が鳴るたび、胸が跳ねた。
宗介さんからのメッセージは、相変わらず短くて優しかった。

【体調どうだ】
【無理してないか】
【何かあったら言ってほしい】

白石くんに体調不良をばらされて空気が悪くなっていたが、それでも彼は私に気遣うメッセージを送ってくれる。その優しさに私の心はぐらつきながらも、いつも通りの文面で返した。

【大丈夫です】

今海外にいる彼に余計な負担を感じさせたくない。彼が日本に戻ってきたら彼の番号はブロックするつもりだ。物理的にも、感情的にも、戻れない場所まで一歩下がろうと思う。

夜、里美の部屋で布団に横になると、
無意識に“誰かの手”を探してしまう自分に気づいて、そっと自分の指を握りしめた。

「……大丈夫」

小さく呟く。
この選択は、間違っていない。
まだ名前もないこの命を、守るための一歩なんだから。
そう言い聞かせながら、私は静かに、宗介さんとの距離を置き始めた。
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