不完全な私を愛してくれたのは、年上の彼でした
「希が、図書館でスマホを落とした日?」
「そう。午後2時20分から3時05分まで。たった45分間だったけど、あの時間が全てを変えた」
悠大さんが、私の手を優しく握る。
「あの45分間がなければ、今の私たちはなかったよね」
「希が、あのスマホを落としてくれて……変な言い方だけど、本当に良かった」
悠大さんが笑う。
「私も。あの時は、恥ずかしくて死にそうだったけど」
「でも、そんな希が可愛かったよ」
「もう、からかわないで」
私たちは笑い合った。
「日曜日、一緒にお店に行こう」
「いいね。武男さんの新作タルト、食べたいな」
「祖父ちゃん、喜ぶよ」
夜空には、無数の星が輝いている。
そして、私たちの未来も──きっと。
「ねえ、希」
「なあに?」
「僕たち、これからもずっと一緒に、不完全なままで生きていこう」
「うん、そうだね」
私は決意するように、悠大さんの手を強く握り返した。
私たちは、春の夜道を並んで歩く。
あの日、図書館で落としたスマホのヒビが、私に教えてくれた。
完璧じゃなくても、想いがあれば人は繋がれる。
不完全だからこそ、温もりが生まれるって。
首元のペンダントが、優しく揺れている。
蜘蛛の巣状のヒビの模様。
それは、私たちの始まり。
そして、これからも続いていく物語の──証。
【完】


