用済みだと捨てたのはあなたです、どうかおかまいなく~隣国で王子たちに愛されて私は幸せです~
「さぁ、熱いから気を付けてお飲み」
「いただきます」
 トレイごとベッドに置かれたそれをそっと手に取る。
 湯気が立ち上るカップからは、香りが一層強く感じられた。
「美味しいです……。けど、ちょっとジンジャーが強かったかもしれませんね……」
 思いのほかスパイシーな味になっていて、エレインは首をひねる。
 ハーブティーは、もちろん効能重視だが、やはり飲み口も良いに越したことはない。
 予測と実態に差が出てしまうのは、ブレンドの力が足りていない証拠だった。
 自分の実力不足を噛みしめながらハーブティーを飲み干す。思ったよりも喉が渇いていたようで、体にハーブが染みわたっていく心地が気持ちよかった。
「大切な方のために作ったのを、私が飲むことになってしまいすみません。明日にでも新しいものをお作りしますね」
「その必要はない。これは、エレインに飲んでもらいたくて作ってもらったものだから。――今日言っていた、俺の大切な人っていうのはきみのことだよ」
 優しい眼差しを向けられて、エレインは思考が止まる。
 言葉の意味を理解しかねていると、アランはふっと表情を緩め、エレインの手からカップを受け取ってトレイと共にワゴンに戻した。
「ここのところのきみは、みるみるやつれて疲れている様子だったから、少しでも疲れを取り除けたらと思ったんだ。……だけど、きみの調合したハーブティーに勝るものが思い浮かばなくてね。背に腹は代えられないと、調合をお願いしたんだ」
「そ、そうだったのですか……」
 アランの言う大切な人が自分だったなんて、そんなことあり得ないのに。
 だけどアランは嘘をつく人ではない。
 考えれば考えるほど信じられないけど、エレインはその事実をゆっくりと噛みしめていく。
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