用済みだと捨てたのはあなたです、どうかおかまいなく~隣国で王子たちに愛されて私は幸せです~
「え、エレインさまぁっ! よがっだぁ……!」
 エレインの顔を見るなり涙を流すニコルに、アランもエレインも苦笑いを浮かべる。
「心配かけてごめんなさい、ニコル」
「ほんどでず……ずっ……心臓が止まるかと思いまぢだ!」
「ニコル、とりあえず、テオを部屋に連れて行って寝かせてくれるかい」
「ずびっ……あい、かしこまりましたぁ」
 鼻をすすり涙を拭いて、ニコルがテオに手を差し伸べる。
「テオ、テオがいたらエレインはゆっくり休めないから、今日はもうお休み。明日また会えるから」
「……」
 エレインに抱き着いたまま、テオは黙ってなにかを考えているようだった。
 彼の中で葛藤があったのだろう、ようやくエレインから離れたテオは、濡れそぼった大きな瞳でエレインを見つめた。
「……明日……ほんとに会える?」
「はい、会えます。たくさん寝て、明日また元気なお顔を見せてください、ね?」
「……ん……やくそくだよ」
「約束です」
 差し出された小さな小指に自分のそれを絡め、約束を交わした。
 おやすみなさい、と就寝の挨拶をすると、テオは自分からベッドから降り、ニコルの手を取って自室へと帰っていった。
 二人が出ていくのを見送ると、騒がしかった室内に静寂が訪れる。
(殿下は、休まなくて大丈夫なのかしら……)
 今が何時なのか見当もつかないが、夜更けなのはなんとなく感じる。
 気まずい中固唾を飲んでいると、ノックの音がして、侍従のセルジュがティーセットを乗せたワゴンを押して入室してきた。
「遅い」
「申し訳ございません」
 ベッドの側まで運ばれたそれを、アランが「あとは俺がやるから」とセルジュを下がらせ、室内はまたアランとエレインの二人だけになった。
「喉が渇いただろうから、ハーブティーを用意させた」
「ありがとうございます」
 アランがポットからカップに中身を注ぐと、馴染みのあるハーブの香りがふわりと漂う。
(ローズマリーとジンジャーに、ハイビスカス……あら?)
「これは……」
「そう、きみに教えてもらったブレンドだよ。今日早速エクトルに作ってもらったんだ。さ、起き上がれるかい?」
 アランの手に支えられながらゆっくりと上半身を起こすと、すかさず背中にクッションを差し込んでくれたので、まだだるい体を凭れさせた。
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