用済みだと捨てたのはあなたです、どうかおかまいなく~隣国で王子たちに愛されて私は幸せです~
「――……なるほど、三歳の甥御さんが不眠ですか……、それはなかなか深刻ですね……」
「医者に出してもらった薬は症状の改善が見られないどころか、副作用のせいか機嫌は悪くなるばかりでして。困り果てていたところ、偶然こちらのブレンドハーブが不眠に効くと知り、薬局や売っていそうな店を回ったのですが、どこに行っても手に入らなくて……。あちこち聞き回ってやっとここにたどり着いたところだったんです」
(余程切羽詰まっていらっしゃるのね……)
 ぱっと見落ち着いて見える男性だが、余裕のない話し方や疲労の滲んだ顔をエレインは見逃さなかった。
 ――コンコン
 ノックの後、信徒の一人でエレインの教え子がティーポットとカップを二つ乗せたトレイを運んできてくれた。ここに来る前にエレインが指示しておいたハーブティーだ。
 彼にはエレインのハーブの知識を叩き込んでいるため、エレインの指示も難なくこなしてくれて助かっている。
「ありがとう。あとは私がやります」
 信徒が出ていったのを確認して、エレインはポットを手に取り、カップに注いでいく。
 やわらかな香りが湯気と一緒に立ち上り、鼻孔をくすぐる。それだけで、エレインの心は真綿に包まれたような心地になった。
「いい香りだ」
 男性も同じように感じたのか、息を深く吸って香りを堪能する。
「これは、ラベンダーやレモンバームなど、心を落ち着かせる作用のあるハーブを中心にブレンドしています。――どうぞ」
「ありがとう。……とても美味しい。ハーブティというのは、どれも薬のような味がして苦手だったのですが……これは飲みやすくて美味しい」
 男性は一気にハーブティを飲み干した。
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