用済みだと捨てたのはあなたです、どうかおかまいなく~隣国で王子たちに愛されて私は幸せです~
アランとテオに両手を引かれてたどり着いた先は、王宮の広いガーデンの一角。
(ここになにが?)
不思議に思っていると、アランが再びテオを抱き上げてエレインに向き直る。
「この半年近く、きみが俺たちにくれたたくさんのことに感謝の気持ちを込めて、ささやかなお返しとしてこれを受け取ってほしい」
アランが手を挙げると、控えていたセルジュが近くのランプ台に火を灯す。
すると、どういう仕掛けなのか、そこから火が辺り一帯に移りついていき、あっという間に視界が明るくなった。
「……え?」
ランプの灯りによって浮かび上がった光景に目を奪われる。そこには、エレインの屋敷にあるはずの温室があった。母との思い出がたくさん詰まった、あの温室が。
「こ、これは……」
同じデザインで建てたものかと思ったが、目の前のガラス部分は中が見えないほど傷だらけで、一気に懐かしさが込み上げる。
「きみのお父上が、屋敷を売りに出すという話を聞いてね。その前に温室だけ買い取らせてもらったんだ。さ、中も見てごらん」
促されるまま歩を進める。
アランが先回りして、中のランプにも火を入れてくれた。
ここでもまた目を疑う出来事が起こる。
「そんな……」
(ハーブたちが全部あのときのままだわ……)
この温室を手入れしていた自分が出て行ってしまったから、すっかり枯れてしまっただろうと思っていたのに。
それらはあのときから変わらず元気な姿のまま。
「お父上の話では、誰も温室には出入りしていないとのことだった。きっと、精霊たちはきみの帰りを待っていたのかもしれないね」
(ふわふわさんたち……ありがとう……)
心の中でそう呟くと、温室内にふわふわと漂う彼らは元気よく飛んで跳ねてみせた。
精霊たちがこの温室のハーブをずっと守ってくれていたこと、そして、エレインの大切なこの場所をアランが覚えていてくれて、こうして自分のために守ってくれたこと。その全部が嬉しくて、愛おしくて、胸がいっぱいになった。