用済みだと捨てたのはあなたです、どうかおかまいなく~隣国で王子たちに愛されて私は幸せです~
 嘘偽りのない言葉と、彼の真摯な態度にエレインは感銘を受ける。大抵の貴族は、金や権力を振りかざしてほしいものを手に入れようとする。
 この男性にも、それができたはず。
 だけどそうしなかったし、エレインの馬鹿げた要求に対しても「当然だ」と言わんばかりに応えてみせた。
 申し分ないほどに。
 ますます彼が何者なのか、エレインは知りたいような、知りたくないような複雑な気分を味わう。
「では、お言葉に甘えて、カフスボタンと金貨一枚を頂戴しても? 教会のハーブ園拡大と子どもたちの食費に充てさせていただきます」
 本当はそれすらも恐れ多いのだが、彼の決意と誠意を受け取ろうと決め、この中でも一番安価そうなものを選んだ。
「この中で一番高価なものは懐中時計ですよ?」
 そう言う彼は、眉を上げて笑みを浮かべる。そんないたずらな表情すらも、色っぽく魅力的に魅せてしまうのだから困る。
「……意地悪ですね」
「先に試したのはあなたの方では?」
「それは、」
「必要だったからだと理解しています。あなたの言う通り意地が悪いことを言いました、どうかお許しを」
「許しを乞うのは私の方です。無礼をお許しください」
「許すもなにも、謝罪の必要はありません。私は身ぐるみはがされずに欲しかったものが手に入り上々です」
「……ふふっ」
 両手を上げて大げさにおどけてみせる彼の姿に、たまらず笑いがこぼれた。

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