用済みだと捨てたのはあなたです、どうかおかまいなく~隣国で王子たちに愛されて私は幸せです~
話を終え、二人は教会の門のところで向かい合う。
「では、一週間試してみて効果が見られたら、どこかの薬局でお渡ししたブレンドで作ってもらって引き続き使用してくださいね」
てっきり馬車で来ているのかと思ったが、どうやら歩きらしい。家紋を見れるかなと期待したエレインは、ほんの少しだけ残念に思い、期待していた自分に気づいてなんとなく恥ずかしくなった。
「こちらの我儘を聞いてくださり感謝します」
「くれぐれもお大事になさってください。ハーブがお役に立てることを祈っています」
ありがとうと礼を口にして、彼は踵を返し歩き出す。
その立ち姿は洗練されており、只者ではないことは明らかだ。
この雑然とした街並みから浮いて見えて、おかしさが込み上げてくる。
(本当に、何者なのかしら)
侯爵家のエレインよりも格上の貴族で彼くらいの年ごろの男性となると限られてくるが、エレインには見当もつかなかった。
(それに、あんなにみんなから好かれる人も珍しいのよね……)
思いを巡らせていると、数メートル先の彼がふと振り返り、エレインを認めると爽やかに微笑んだ。
「レディ、次にお会いした際は、名乗らせていただきますからそのつもりで――」
考えていたことを見抜かれたのかとぎくりとするも、彼はそれだけ言って去って行った。
(また来る気かしら? ハーブの入荷は目途が立たないって伝えたのに……)
また会えるのかもしれない、と思うと教会に戻るエレインの足は心なしか軽かった。