用済みだと捨てたのはあなたです、どうかおかまいなく~隣国で王子たちに愛されて私は幸せです~
「おぉおぉ、可愛いシェリーよ、すまんのぉ」
 シェリーの肩を抱き、もう片方の手で髪を撫でる。その目は、先ほどエレインに向けていた面影は全くなく、可愛くて仕方がないといった慈愛に満ちた目をしていた。
「シェリーは中身も容姿も華やかで可愛らしいというのに、エレインはどこを取っても地味で可愛げがなくてなぁ。姉妹なのにこうも差が出るとはなぁ、お前の爪の垢を煎じて飲ませたらエレインも多少は可愛げが出てくるんだろうか」
「んもう、お父さまったら、そんなこと言ったらお姉さまがかわいそうだわ」
 かわいそうなどと、まったく思ってもいない顔でシェリーが言う。
「無能なお前を庇う妹に礼も言えんのかお前は。ったく、本当にお前は母親とそっくりで草の相手しか能がないのだな! せいぜい殿下の不興を買わないようにだけ気を付けておれ!」
「……はい」
「ほらほら、お父さま、お体に障りますからもう休んでくださいな」
 シェリーに促され、父は渋々自室へと帰った。その場に残ったシェリーは、なぜかエレインの腕を取り、歩き出す。
 疲れて腕を払う気にもなれず、そのまま歩を進めた。
「あーあ、せっかく脱輪させたのに時間に間に合っちゃうなんて、ほんっと運がいいのか悪いのかわからないわよね、お姉さまって」
 ハッとしてシェリーを見ると、彼女は忌々し気に顔を歪ませていた。
(やっぱり、シェリーの仕業だったのね……)
 馬車は御者が毎日点検しているはずだから、急に脱輪したと聞いたときはおかしいと思ったのだ。
「まぁ、この調子だと、殿下から婚約破棄されるのも時間の問題でしょうけど、せいぜい家に迷惑だけはかけないでちょうだいよっ」
 シェリーは、掴んでいたエレインの腕を思い切り突き飛ばす。
「あっ」
 バランスを失ったエレインはそのまま自室のドアに体をぶつけ、床に倒れ込んだ。
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