用済みだと捨てたのはあなたです、どうかおかまいなく~隣国で王子たちに愛されて私は幸せです~
 二人で馬車に乗り込んで、エレインは籠からサンドウィッチを取り出して食べ始める。ガタガタと揺れる馬車の中では食べにくいが、義母たちの顔を見ながら食べることに比べたら天国と地獄ほどの差だ。
 以前は、義母に食事を減らされたり抜かれたりすることが頻繁にあった。長いときで丸二日食べられなかったこともある。だけどそういう時は、温室のハーブをかじって飢えを凌いでいたし、ときどき義母の目を盗んで料理長が食べ物を持ってきてくれることもあった。
 使用人たちは基本みんないい人で、中には母が生きていたときから勤めてくれている人もいて、エレインのことを気にかけてくれる人もいる。だけど、彼らの雇用における権限を握っているのは義母なので、義母の目が光っている以上なにもできないでいた。
 エレインもまた、彼らが仕事を失うことは望んでいない。
 そんなこんなで、今屋敷の中でエレインが信頼できるのは、ニコル一人だ。
 彼女は、ハーブを事業化すると決まった一年前に、父に願い出て雇った侍女だった。
 平民の出身だけど、文字の読み書きとお金の計算ができる優秀な人材でもある。住み込みでエレインの身の回りの世話まで引き受けてくれて、文句ひとつ言わないどころか、いつも明るく前向きな性格の彼女にはとても助けられている。
「今日はいつも通り領地のハーブ園へ行って、収穫時期の指示と、加工工場での製品確認の後、昼食を挟んで教会へ。その後王宮で王太子殿下とお茶会です」
「うっ……」
「エレインさま、心の声が漏れています」
「……ニコルの前でくらい許してちょうだい」
「くれぐれも、ご本人の前で漏らさないようにお気を付けくださいね」
「それは気を付けるけど……はぁ……」
 さっき考えないように頭の隅に追いやった悩みの種のせいで、食べていたサンドウィッチの味も分からなくなってしまった。

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