用済みだと捨てたのはあなたです、どうかおかまいなく~隣国で王子たちに愛されて私は幸せです~
(え? えっ? なに!?)
 アランの美しい顔が迫る。
 突然の行動にパニックになるエレイン。
 心臓が悲鳴を上げた。
「で、殿下!?」
(無理! 美しすぎて、見れない!)
 鼻先が触れそうなくらいの至近距離に、エレインは堪らず目をぎゅっと閉じてしまう。
「あぁ、目を閉じないでエレイン。もう少しよく見せて」
「へ?」
(目?)
 恐る恐る目を開けると、こちらを覗き込むアランと目が合い、にっこりと微笑まれてしまう。
(だから、顔が良すぎるんですって……!)
 エレインは必死に無の境地になり、至近距離のアランに耐える。
 アランはしばらく角度を変えてエレインの瞳を見たのちに、「やっぱりそうか」と一人で納得するとようやく手を離した。
 解放されたエレインは、ばくばくと暴れる心臓を必死に落ち着かせようと深く呼吸を繰り返す。
「きみは、アンバーの瞳の持ち主なんだね。気づかなかった」
「アンバーの瞳、ですか?」
「あぁ、これもそうか、この国の……。アンバーの瞳っていうのは、光の加減によって色が変わる瞳のことを言うんだ。不躾に触れてすまない、実物を見るのは初めてでつい……」
(初めてって、こんな変哲もない瞳が? この国で茶色の目は少ないのかしら)
「いえ、びっくりしましたが大丈夫です。……殿下? お加減でも悪いのですか?」
 顎に手を当てて俯いてしまったアランに、エレインが心配になって声をかけるが、彼は「少し考え事をしていただけだよ」とすぐに笑顔になった。
「さぁ、今日は疲れただろう、遅くまでありがとう」
「殿下も、ゆっくりお休みください」
 就寝の挨拶をして、長い長い一日がようやく終わった。
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