用済みだと捨てたのはあなたです、どうかおかまいなく~隣国で王子たちに愛されて私は幸せです~
 エレインは全く気にしていないのに、それを見たアランが青ざめた顔で陳謝して「もし傷が残ったら、その時は俺が責任を取るから」などと真剣に言うものだからエレインの方が困り果ててしまった。
(あ、あんなことを軽々しく言ってしまえるなんて、信じられない)
 仮にも一国の王子ともあろう人が。
 とエレインは、そのときのことを思い出して顔が熱くなった。
 社交辞令だとわかっていても、男性慣れしていないエレインは胸が高鳴るのを止められなかった。
(きっと、女性の扱いには慣れてるから、誰にでも言っているんだわ)
「エレインさま? 顔が赤いですけど、熱でもあるんじゃないですよね?」
 一緒にテオを見ていたニコルが目ざとく見つけて、訝しむ。
「大丈夫よニコル。ちょっと部屋の中が暑いだけ」
「本当ですか? こっちに来てから朝から晩までちょっと働き過ぎなんですよ。また痩せましたよね? せっかくここまで来る道中で健康的になってきて安心してたのに……」
 ニコルの指摘にぎくりとする。
 母国からこの国に来る馬車の旅の間、エレインができることは食べることと寝ることしかなく、この国に来る頃にはやつれていた頬もふっくらとし、くっきりと濃かった隈も綺麗さっぱりなくなった。
 しかし、テオの相手をする片手間ではハーブに掛けられる時間が足りずに、最近は寝る間も惜しんで書物を読み漁ったり、ブレンドしたりと多忙を極めていたせいで、体重が落ちてきたのは事実だった。
(少し太っていたから、今がちょうどいいんだけど)
「そんなことないわよ。向こうにいたときより、よっぽど休ませてもらっているわ」
 確かに忙しいが、母国にいたときと比べれば雲泥の差だ。
 食事もちゃんとしたものを三食食べれているし、ここには義母たちのようにエレインを害する人たちもいないどころか、やりたいことを前面的に応援して助けてくれる人ばかり。
 不満の一つもなく、快適過ぎるくらいだった。
「あ、そうだ、ちょうどエルダーフラワーのコーディアルシロップを作ったところだから、飲んでみましょうか」
「だぁっ、だぁっ」
 エレインが立ち上がると、それまで馬のおもちゃで遊んでいたテオが足元にしがみついてきた。
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