用済みだと捨てたのはあなたです、どうかおかまいなく~隣国で王子たちに愛されて私は幸せです~
両手でぎゅうっとエプロンを掴んで、つぶらな瞳でエレインを見上げるその必死な姿に胸がきゅんと音を立てる。
「テオドールさまも手伝ってくれるんですか?」
「だぁ!」と両手を広げるのは、抱っこの催促だ。
ここ一日二日の間で、テオは抱っこをせがむようになった。
それもエレインだけに。
アランやニコルが代わろうとしても、全力で嫌がって決してエレインから離れようとしない。
(私にだけとか……可愛すぎる~!)
テオの体重は十五キロほど。
なかなかの重労働だが、ずっと抱きしめたいと思っていたエレインからすれば、喜ばしいことこの上なかった。
「じゃぁ、一緒にキッチンに行きましょうか」
かがんで両手を差し出せば、すがるようにして首元に抱きついてくる小さなからだを、エレインは大切に持ち上げた。
ニコルに目配せをして、ドアを開けてもらいキッチンを目指す。アランを抱っこしたエレインの後ろをニコルが付いてくる。
「冷たいお水で作りましょうね。エルダーフラワーは、ブドウのような味がしてとっても美味しいんですよ」
「ぶー?」
「そう、ブドウです。テオドールさまもお好きですよね」
「あう、あう」
テオとの会話を楽しみながらキッチンに向かっていると、「――ほう、噂は本当だったのか」と低い声が届いた。
声のほうを振り返った二人は、声の主を見て絶句する。
(こ、国王陛下!?)
艶やかでこしのある黒髪を後ろになでつけ、凛々しい眉と力強い目をした壮年の男は、紺地に金刺繍が施された軍服に身を包んでいる。
その姿は、見るからに威厳と尊厳に満ちあふれており、立っているだけでその存在に気圧されそうになるほどだ。
ニコルはさっとエレインの後ろへ下がり、腰を落として頭を下げる。
テオを抱いていたエレインも、慌てて頭を下げた。
ここへ来てすぐの頃、アランに城を案内してもらったときに、国王陛下夫妻の姿絵を目にしていたためにすぐに気づけたのが幸いだ。
「こ、国王陛下にご挨拶申し上げます」
「よいよい、楽にしてくれ。――きみがエレインだね」
「はい。隣国・ヘルナミスから参りましたエレインと申します。ご挨拶が遅れ申し訳ございません。陛下とアラン殿下には格別のご配慮を頂戴し、感謝申し上げます」
「あうう?」
エレインの様子がいつもと違うことに気づいたテオが、顔を覗きこんでくる。そして、陛下の方を向くと小さな指を指して、「め!」と頬を膨らませた。
「はははは! テオに怒られてしまったなぁ。すまないすまない」
そう笑ったときの面差しに、アランの面影が少し垣間見えた気がした。
「テオドールさまも手伝ってくれるんですか?」
「だぁ!」と両手を広げるのは、抱っこの催促だ。
ここ一日二日の間で、テオは抱っこをせがむようになった。
それもエレインだけに。
アランやニコルが代わろうとしても、全力で嫌がって決してエレインから離れようとしない。
(私にだけとか……可愛すぎる~!)
テオの体重は十五キロほど。
なかなかの重労働だが、ずっと抱きしめたいと思っていたエレインからすれば、喜ばしいことこの上なかった。
「じゃぁ、一緒にキッチンに行きましょうか」
かがんで両手を差し出せば、すがるようにして首元に抱きついてくる小さなからだを、エレインは大切に持ち上げた。
ニコルに目配せをして、ドアを開けてもらいキッチンを目指す。アランを抱っこしたエレインの後ろをニコルが付いてくる。
「冷たいお水で作りましょうね。エルダーフラワーは、ブドウのような味がしてとっても美味しいんですよ」
「ぶー?」
「そう、ブドウです。テオドールさまもお好きですよね」
「あう、あう」
テオとの会話を楽しみながらキッチンに向かっていると、「――ほう、噂は本当だったのか」と低い声が届いた。
声のほうを振り返った二人は、声の主を見て絶句する。
(こ、国王陛下!?)
艶やかでこしのある黒髪を後ろになでつけ、凛々しい眉と力強い目をした壮年の男は、紺地に金刺繍が施された軍服に身を包んでいる。
その姿は、見るからに威厳と尊厳に満ちあふれており、立っているだけでその存在に気圧されそうになるほどだ。
ニコルはさっとエレインの後ろへ下がり、腰を落として頭を下げる。
テオを抱いていたエレインも、慌てて頭を下げた。
ここへ来てすぐの頃、アランに城を案内してもらったときに、国王陛下夫妻の姿絵を目にしていたためにすぐに気づけたのが幸いだ。
「こ、国王陛下にご挨拶申し上げます」
「よいよい、楽にしてくれ。――きみがエレインだね」
「はい。隣国・ヘルナミスから参りましたエレインと申します。ご挨拶が遅れ申し訳ございません。陛下とアラン殿下には格別のご配慮を頂戴し、感謝申し上げます」
「あうう?」
エレインの様子がいつもと違うことに気づいたテオが、顔を覗きこんでくる。そして、陛下の方を向くと小さな指を指して、「め!」と頬を膨らませた。
「はははは! テオに怒られてしまったなぁ。すまないすまない」
そう笑ったときの面差しに、アランの面影が少し垣間見えた気がした。