用済みだと捨てたのはあなたです、どうかおかまいなく~隣国で王子たちに愛されて私は幸せです~
 体が動かない重苦しさで、エレインは目を覚ました。
「ん……」
 見慣れた天井は自室だとすぐに気付き、自分がアトリエで倒れたことを頭が理解する。
(どのくらい眠ってたのかしら……)
 室内は暗く、日が落ちてだいぶ時間が経っていそうだ。
 視界だけ動かした先に、エレインの手を握りしめた両手に祈るように額をあてがったアランの姿があった。
 ぎゅっと優しく握られた手は温かく、覚醒していくに連れて熱が増していくようだ。
 左手を動かそうとして、これまた自由が利かないことに気付き、そちらを見遣れば、エレインの左手にしがみつくようにしたテオがいた。
(重たかったのは、テオさまだったのね)
 嬉しさが込み上げてきたのも束の間、眠るテオの目元に酷い涙の痕を見つけて罪悪感が押し寄せる。
 自分が倒れたと聞き、さぞ驚いただろう。
(殿下にも迷惑をかけてしまって、本当に申し訳ない……)
 ピクリとエレインの手が動いた瞬間、アランがバッと顔を上げた。
 空色の瞳がエレインを捉え、目が合うと彼は息を吐くようにエレインの名を口にした。
「気分はどう? 痛むところや吐き気は?」
「もう、大丈夫です……」
「うぇ? エレイン……? エレイン、エレイン! 大丈夫? エレイン!」
 話し声で目を覚ましたテオがエレインに覆いかぶさるように抱き着いてきた。
 その小さな体を、ぎゅっと抱きしめ震える背中をとんとんとあやす。
 ひっくひっくと小さく痙攣させながら、テオは何度もエレインの名を呼んだ。
「テオさま。エレインはもう大丈夫ですよ。ちょっと眠くなってしまっただけなんです。驚かせてすみません」
「テオ、エレインから離れるんだ」
「やだやだ! エレインーー!」
「はい、エレインはここにいます。どこにもいきません」
 困り顔のアランに「大丈夫」の意を込めて微笑むと、アランは立ち上がりドアに向かって声を掛ける。
 勢いよくドアが開き、泣きそうな顔のニコルが飛び込んできた。
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