ループするメイドは破滅ルートを回避したい!はずが、なぜか宰相様の溺愛ルートに入ってしまいました!?
22.見えない影
 窓の外はまだ淡く、夜と朝の狭間を揺らしていた。

 王宮仕えのメイドの朝は早い。使用人部屋の一室で、アリアは小さな鏡台の前に腰掛けると朝の身支度を進めていた。
 ブラシで髪を梳かしながら、鏡台に置いた小さな箱が目に入る。

 昨夜セドリックから贈られた銀の髪飾り。
 まだ手にしたばかりのそれは自分には眩しすぎる宝物のようで、なかなか触れることすらできずにいた。

 アリアは震える指先で、そっと箱を開ける。

 中から現れるのは、銀の細工が施された繊細な髪飾り。
 陽の光を受けて、ほんのりきらめく花の模様が浮かび上がる。

「……すごく、綺麗……」

 布で丁寧に磨きながらゆっくりと光に当てると、光の加減でほのかに模様が煌めく。

 初めて男性から贈られた贈り物。
 それがこんなに素敵なものだなんて、まだ信じられない。

 この髪飾りをセドリックが自分の髪に挿してくれたときの感触や、首筋に触れた指先の温度がまだ肌に残っている気がする。

「……私なんかに、どうして」

 ぽつりと漏れた独り言は、鏡の中の自分に向けた問いだった。

 宰相という立場の人が、ただのメイドである自分に。
 荷物持ちとしての付き添いだったはずの視察で、こんな贈り物を用意してくれていたなんて。

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