ループするメイドは破滅ルートを回避したい!はずが、なぜか宰相様の溺愛ルートに入ってしまいました!?
(どうしよう…このままじゃまたエレナ様がスパイ扱いされちゃう……!!)

 アリアは階段を下りた先で、思わず背を壁に預けた。
 石壁の冷たさを感じながら肩を落とす。

「アリア?どうした、そんな顔して」

「わぁああ!!」

 ふいに顔を覗き込まれて、アリアは盛大に飛び上がった。

 そこには文官服の裾を揺らしながら立つ青年の姿。
 明るい栗色の髪、どこか飄々とした笑み。

「……ユーリ!?なんでここに…」

 思わず声が漏れた。

「そりゃ文官なんだから文官棟にいるだろ。偶然通りかかったらなんか深刻そうな顔してたから、腹でも痛いのかと思って」

 人懐っこく笑うユーリは、いつも通りの軽い調子だった。

(そうだ、ユーリがいた…!!)

 過去のループでは顔を合わせれば憎まれ口ばかりだったけれど、今回は違う。

 気さくでフレンドリーで、しかも文官棟で働いている。
 八方ふさがりのアリアにとっては、ユーリが救世主のように輝いて見えた。

「あのね、ちょっと相談したいことがあるんだけど…」

 アリアはユーリを文官棟の端の窓辺まで引っ張っていく。
 誰にも聞かれないようにと考えてのことだったけれど、手の中にある手紙のことを考えると落ち着かなかった。

「実はちょっと困ったことがあって。エレナ様宛に手紙が届いたんだけど国交のない他国の書式でね?しかもそれが王宮の記録に残っちゃってるの……」

「国交のない他国?」

「……マルタユ帝国」

 アリアの話を聞きながら、ユーリの顔が険しくなった。

< 112 / 167 >

この作品をシェア

pagetop