ループするメイドは破滅ルートを回避したい!はずが、なぜか宰相様の溺愛ルートに入ってしまいました!?

30.本性

「まさか、それに辿り着くなんて……本当にアリアには驚かされるな」

 低く柔らかな声が、暗がりの中で響いた。
 その声はやけに穏やかで、静かな夜風のように耳に届く。でもその奥底には、冷えた刃のようなものが潜んでいた。

「それ、ずっと探してたんだよ。監察局にも地下の保全区画も全部調べたのに見つからなくてさ。それが、こんな吹き溜まりで埃をかぶったなんてな」

 ユーリの視線がアリアの手にある鋳型へと落ちて、反射的に隠すように両手で抱えて身構える。
 乾いた笑みを浮かべながら、ユーリは小さく肩をすくめた。

「それさえあれば、すべてがうまくいったのに」

「どういう意味……?」

 アリアの呟きに、ユーリがにこりと微笑む。
 けれどその笑みには酷薄さが滲んでいた。

「それは本来、クラヴィス家の倉庫から()()()()()()()だったものだから」

「……えっ……?」

「エレナ嬢とクラヴィス家が、マルタユ帝国と通じて反逆を企てていた証拠。それがあいつらの手元から出てくれば、すべてが()()になる。惜しかったな」

 残念、なんて嘯きながらユーリの表情に落胆はない。
 むしろこの状況すらもゲームの一つとして楽しんでいるようで、アリアは背筋が寒くなった。

「ユーリが……全部仕組んだの?私に協力するふりをして、あの手紙も監察局に渡したの?」

「そう。あの手紙はもともと俺が仕掛けたものだから」

「……!?」

「本来の予定では、監察局に密告が届いて、クラヴィス嬢の私室からマルタユ帝国との内通を示す手紙が発見される。それが最初の台本(ストーリー)だったんだけど」

 ユーリはまるで戯曲を演じる俳優のように、倉庫の中をゆっくりと歩く。

「でも、アリアがそれを持っていたからちょっと書き直した。見せられたときは驚いた。ほんと、アリアって油断させてくれないよな」

「どうして!?どうしてユーリが、何の関係もないエレナ様を陥れるようなことを…」

「関係ならある。俺はルガード家の血を引く、正統な後継者だから」

 くすっと笑ったユーリの表情は、ぞっとするほど冷たかった。


 ―――ルガード家の、血……?


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