ループするメイドは破滅ルートを回避したい!はずが、なぜか宰相様の溺愛ルートに入ってしまいました!?
 そして――
 気づけば王宮の長い回廊を通り抜けて、重厚な扉の前へとたどり着いていた。

「え、ここって……」

 開かれた先に広がるのは、豪奢だけれど品の良い調度品でまとめられた『宰相の私室』だった。

「な、なんで自室なんですか!?メイドの私がここにいるのって、すごくまずいんじゃ…!?」

「動けない君を他に預けるわけにもいかないだろ」

 そう言って、彼はアリアの体をそっとベッドに下ろした。
 沈み込むような柔らかさに、アリアは気まずくて視線が泳いでしまう。

 セドリックはそんなアリアの混乱など意にも介さず、そのまま彼女の足元に視線を落とした。

「……ケガはないか?」

「……あ、えっと……大丈夫、です」

「本当に?」

「は、はい……たぶん…」

 彼の蒼玉色の瞳が細められる。
 それは、ただのケガの確認だけではない『別の何か』を見透かそうとしているような。

(な、なんでそんな目で見るの……!?)

 アリアがじわりと背中を汗ばませた瞬間、セドリックが静かに動いた。

「……それなら聞かせてもらおうか」

 そう言って、セドリックはベッドの上に両手をつく。
 まるでアリアを包囲するように、正面から、身を屈めて。


「君はなぜ、あの男を警戒していた?」


(……えっ、)

 ささやくような低い声が、耳の奥に落ちた。

 あまりに唐突に核心を突かれて呆然と見上げると、息をすれば触れてしまいそうな距離にセドリックの顔がある。

「納得のいく答えをもらうまでは、ここから出さない」



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