ループするメイドは破滅ルートを回避したい!はずが、なぜか宰相様の溺愛ルートに入ってしまいました!?
「どうだ、正直に言う気になってきたか?」

 耳元に落とされたその囁きに、アリアは喉の奥で小さく息をこぼす。
 熱くなる耳の裏、喉の奥から零れそうになる声、心臓の音。すべてが普通じゃない速度で高鳴っていく。

「それとも、知られてはいけない何かがある?」

 低く落とされた言葉は、ぴたりとはまる鍵のようにアリアの核心に触れてくる。
 図星だった。否定もできなければ、肯定もできない。

(ほんとに……だめ、これ以上はほんとに……!)

 指先ひとつに翻弄されるほどに身体が熱を帯びて、視界がにじみそうになる。内心では悲鳴を上げながらも、それを必死で堪えていたとき。

「目が潤んできたな。泣くのか?」

 囁くような声音が耳朶をくすぐる。
 指先が、頬をゆっくり撫でて、唇のすぐ近くまで――

「……な、泣きません……!」

 アリアは顔を赤らめながらも、ふるふると全力で首を振る。
 こんなところで涙なんて絶対に見せたくない。

 その反応に、セドリックはふっと微笑んだ。

「……今日はここまでにしておくか」 

 その言葉とともに、ようやくアリアの肌から指が離れる。
 満足げに、ただ少しだけ名残惜しそうに。

 ぽん、とアリアの頭を軽く撫でるようにして、セドリックは立ち上がった。
 それはあまりにも唐突で優しくて――ずるかった。

「また明日聞かせてもらおう。君の観察報告と、その続きを」

 低い声が耳に残るまま、その背中が離れていくのをアリアは呆然と見つめていた。

(……い、生きた心地がしない……!)

 心も体も振り回されただけのような感覚に、アリアはぐるぐると混乱するばかりだった。


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