ループするメイドは破滅ルートを回避したい!はずが、なぜか宰相様の溺愛ルートに入ってしまいました!?
 けれど、驚かされたのはそれだけじゃない。

 商人たちと話しながらも、セドリックは周囲にきちんと目を配っていた。果実を落とした子どもにさりげなく拾って手渡したり、腰の曲がった老女には静かに声をかける。

 威圧するでも押しつけるでもなく、ごく自然に当たり前のようにそんな小さな助けを差し出せる人。
 その背中がどこまでも頼もしくて、アリアは引き寄せられるように目を離せなかった。さっきまで文句を言っていた鞄の重さなんてすっかり忘れてしまうほどに。

 アリアは自分でも気づかないうちに胸がドキドキ高鳴っていることに驚きながら、ふと、人々の視線に込められたものに気がついた。

(……この国の人たちは王室をちゃんと見てる。そして信じてるんだ)

 けれどもし、また――()()()()が訪れてしまったら。

 過去の記憶がありありとよみがえってくる。

 あのとき、民の怒りは一瞬で火がついた。
 ミカエル王太子殿下は暴君と呼ばれ、王政は崩壊し、そして自分は――

(……私は、処刑されたんだ)

 胸の奥が、ぎゅっと冷たく締めつけられるようだった。

 自分はあのときまで『王宮にいれば守られる』とどこかで驕っていた。

 でも違った。
 王室が民の信頼を失ったとき、民はその象徴ごと切り捨てる。
 何度繰り返してもそれは変わらなかった。

(だから……繰り返させちゃいけない。そのために絶対に殿下とエレナ様の仲を守る。国も、民も、この未来も)

 ぐっと拳を握った、そのとき。

「ねえ、お姉ちゃんって宰相様の彼女なの?」

「……へ?」

 振り向いた先にいたのは、先ほど落とした果実をセドリックに拾ってもらっていた、小さな男の子だった。

「え、えぇえっ!?!?」

(か、彼女っ……!?私が……!?)

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