ループするメイドは破滅ルートを回避したい!はずが、なぜか宰相様の溺愛ルートに入ってしまいました!?
19.飴より甘い
 思考が混線した状態のままで、アリアはセドリックに手を引かれていた。

 しばらく歩いて立ち止まった先は、小道の先にある一軒の小さなお店の前だった。
 店先の看板には『飴細工専門店』の文字。

「あっ宰相様!来てくれたんですね!」

 店先からぴょこっと顔を出したのは、さっきセドリックに飴を渡すよう頼んだあの少年だった。

「もらった飴が美味かったから、もう一つもらおうと思ってな」

「本当ですか!?」

 少年の表情がぱあっと輝く。セドリックの賛辞に、全身で嬉しさを表しているのが微笑ましい。

「あぁ、特大サイズで頼む」

「父ちゃーん、飴一つ特大サイズで!!」

 元気な声が店の奥へ飛んでいくと、しばらくしてがっしりとした体格の男性――少年の父親が店の奥から姿を見せた。
 アリアはこそっとセドリックを見上げて話しかける。

「……もしかして最後の一軒ってここですか?」

「そうだ」

 短く即答するセドリックに、アリアは意外すぎて目を丸くした。あの冷静沈着な宰相閣下が、こんな小さな飴細工屋にわざわざ立ち寄るなんて。

(もしかして実はけっこう甘党だったり……?)

 そういえばスイーツにも詳しそうだったしな、と日次報告で用意されていたスイーツを思い出す。

 そんなことを考えている間に、目の前では飴づくりが進んでいた。
 少年の父親である飴職人が手鍋から鉄板の上に細く飴を垂らして、器用な手つきでくるくると絵を描いていく。

「わあ早い…!」

「へへ、手早くやらないとすぐ固まっちまうんですよ」

 そう言いながら飴に棒をつけると、あっという間に色鮮やかな飴細工が完成した。

「お待たせしました宰相様!」

「ありがとう」

 セドリックは代金を手渡すと、静かに問いかけた。

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