ループするメイドは破滅ルートを回避したい!はずが、なぜか宰相様の溺愛ルートに入ってしまいました!?
「ところで店主、こういう硬貨を見たことはないか?」

 そう言って、懐から取り出した一枚の硬貨を取り出して見せる。あの奇妙な紋章入りの硬貨だ。
 店主は不思議そうに手に取ったあと、すぐにぽんと手を打った。

「ああ、これなら昨日うちにも紛れてましたよ」

 ごそごそとカウンターの下を探ってから、数枚の硬貨を見せてくれた。一見すると普通の王都通貨と見分けがつかないが、裏返してみるとやはり――

「……同じだな」

 セドリックが低く呟いた。

 さっき見つけたものと同じだ。毒針ブローチのカードついていたのと同じ紋章が、王宮貨幣局の上から刻印されている。

(このお店にも……ということはもう南市街中に広がっているの?)

 過去のループにはなかった、五回目にして初めての事件。

 アリアの胸の奥が、ざわざわと騒ぎ出す。

 人々の笑い声と活気に満ちたこの光景が、何か取り返しのつかないものに変わってしまうかもしれない。そんな悪い予感が脳裏をよぎってしまう。

「……ありがとう店主、参考になった」

 セドリックは表情を変えずにお礼を言うと、くるりとアリアのほうへと向き直った。

「ほら」

琥珀色に光る大ぶりな飴細工が目の前に差し出される。

「えっ、私に?」

「今日一日荷物持ちをしてくれた礼だ」

 きょとんとするアリアに、セドリックはあっさりと言う。

「うわ、ありがとうございます……けど、ちょっと大きすぎません!?」

 まるでお祭りの屋台で売っている、子どものころに憧れた夢みたいな大きさに思わず声が出る。想像以上の大きさとずっしりとした重み。

「ママ見て、お姉ちゃんが持ってる飴おっきい~!」

 通りすがりの子どもたちが、指をさしてはしゃいでいるのが聞こえた。周囲の大人たちまで「あらほんとね~」とか言いながら微笑ましそうにこちらを見ている。

(なんか目立ってる!?めちゃくちゃ恥ずかしいんですけど…!)

 ちらりとセドリックを見上げると、案の定うっすらと口元を緩めていた。それはもう、あからさまにからかいモード全開の目で。

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