ループするメイドは破滅ルートを回避したい!はずが、なぜか宰相様の溺愛ルートに入ってしまいました!?
 初めは本当に雑用?なんて思っていたけれど、すぐにそんな文句なんてどこかへ吹き飛んでしまった。それは、前を歩くセドリックの姿がどこまでも頼もしくて、その背中を追いかけることに必死だったからかもしれない。

(……開けてみよう)

 ぱちん、と留め具を外す。
 中を開いて覗くと書類や地図、現地で渡された資料。セドリックが時おりペンを走らせていたノートなど雑然と入っていた。

 重かったはずだ。でもそれらがすべてちゃんと意味のある重さだったと今は分かる。

(そうだ、あとで見やすいように視察した順番に整理しておこう)

 鞄の中の書類の束を慎重に取り出して、丁寧に一枚一枚めくっていく。
 視察した順番を思い出しながら、商店のもの、物価の記録、住民の意見――それぞれを分かりやすいように並び替えていく。

 たったそれだけのこと。
 けれどアリアにとっては大切な作業だった。

 馬車の中は、静かだった。
 聞こえるのは、車輪が石畳をゆくリズムと、セドリックの安らかな寝息だけ。

(きっと自分にできることはまだ少ない。それでも……少しでもこの人の役に立てるなら)

 胸の奥に、小さな灯が灯る。
 それは誰にも知られない、小さな恩返しだった。


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