盛りのくまさん
緑色の地に白い小花が散ったファンシーなこたつ布団。彼がベランダへと続くガラスドア側に座り、向かい側に私が座った。あ、カーテンが変わってる! あたたかそうなオレンジ色。
彼は自分が作った味噌バターコーンラーメンのつゆをひと口味わい、くまさん型に抜いた紅白かまぼこをひとつ食べ、
こちらの話をひとつも聞かないうちにそう言って顔をしかめた。な、何でわかったんだ。
「いるのよ。うちの会社にも。口ばっかでかいやつが」
「そ、そうなんだ」
「それがね、
見た目良いひと風なのよ。誰にでも優しくて親切で、仕事もできて、って。
だけど言ってること全部パワハラなの。女性はなんだー、とか、学歴がこうだー、とか」
「どこにでもいるんだね。そう言うひと」
「そうよ。
口の中に皮つきのドリアン突っ込んでやろうかしら。もちろんアタシは酸素マスクつけるわよ」
「ドリアン見たことあるの?」
「ないわよ。皮つきのニンニクだって良いわ」
私の質問に彼はさらっと答え、おろしニンニクの浮いたオレンジ色のスープをえんじ色のレンゲでそっとすくって飲んだ。
彼は世界的に有名な食品会社に勤めている営業部員らしい。本人いわく「面接で阿波踊りしたら受かっちゃったー」。んなわけあるか。
それなりにモテるのをしばしば見かける。マンションの近くで若い女性に告白されていたり、近くの高校に通う学生たちがこっそり彼の後をつけていたり、大通りに出るところにあるコンビニで買い物をする彼をちらちら見ているひとがいたり。
でも、たいていは逃げる。このおネエ言葉で。(もしかして武器?)
同性愛者なのかどうなのかはわからない。ただ、会社では普通、いや、普通ってなんだろ。とりあえず「私」と敬語で通して、
親しいひとにだけ女言葉でしゃべる。つまり私も親しいのか。なんかちょっと優越感感じちゃう。
最初は私も彼の女言葉にびっくりしたけれど、すぐに慣れた。とても似合っていると思う。自然で。
そして、
彼は、美味しいものに目がなかった -
「そう言うやつってモテないのよ」
彼は自分が作った味噌バターコーンラーメンのつゆをひと口味わい、くまさん型に抜いた紅白かまぼこをひとつ食べ、
こちらの話をひとつも聞かないうちにそう言って顔をしかめた。な、何でわかったんだ。
「いるのよ。うちの会社にも。口ばっかでかいやつが」
「そ、そうなんだ」
「それがね、
見た目良いひと風なのよ。誰にでも優しくて親切で、仕事もできて、って。
だけど言ってること全部パワハラなの。女性はなんだー、とか、学歴がこうだー、とか」
「どこにでもいるんだね。そう言うひと」
「そうよ。
口の中に皮つきのドリアン突っ込んでやろうかしら。もちろんアタシは酸素マスクつけるわよ」
「ドリアン見たことあるの?」
「ないわよ。皮つきのニンニクだって良いわ」
私の質問に彼はさらっと答え、おろしニンニクの浮いたオレンジ色のスープをえんじ色のレンゲでそっとすくって飲んだ。
彼は世界的に有名な食品会社に勤めている営業部員らしい。本人いわく「面接で阿波踊りしたら受かっちゃったー」。んなわけあるか。
それなりにモテるのをしばしば見かける。マンションの近くで若い女性に告白されていたり、近くの高校に通う学生たちがこっそり彼の後をつけていたり、大通りに出るところにあるコンビニで買い物をする彼をちらちら見ているひとがいたり。
でも、たいていは逃げる。このおネエ言葉で。(もしかして武器?)
同性愛者なのかどうなのかはわからない。ただ、会社では普通、いや、普通ってなんだろ。とりあえず「私」と敬語で通して、
親しいひとにだけ女言葉でしゃべる。つまり私も親しいのか。なんかちょっと優越感感じちゃう。
最初は私も彼の女言葉にびっくりしたけれど、すぐに慣れた。とても似合っていると思う。自然で。
そして、
彼は、美味しいものに目がなかった -
「そう言うやつってモテないのよ」