ここが乙女ゲームの世界でも好きにさせてもらいます!

「……ここが本当に乙女ゲームとやらの世界なのか、知りたければ行ってみるしかなさそうね」
幸い、このあと特別な予定はない。

「かしこまりました! 急いで支度しますねっ」

心なしか、ジーナの目はいつもよりも爛々としている。それだけではなく、衣裳部屋へ向かう足取りも軽やかだ。
娯楽が乏しいこの国で、良かれ悪しかれなにかが起こりそうという状況は、心がはやるものなのかも、とエレノアは苦笑する。

「いや、女性ふたりだけで行くのは危険です。念のため、わたくしの息子を護衛につけましょう」
ヘルマンの息子ハンクは、この屋敷で護衛の仕事に就いている。エレノアとは幼い頃から兄妹のように育ってきた間柄だ。

「ハンクが一緒なら心強いわね」
心の内を悟られないように、エレノアは精いっぱいの笑顔でそう答えた。

図書館へ行くことを決めたのはエレノア自身とはいえ、まったく不安がないわけではない。むしろ最初にレイズの手紙を読んだ時よりも、不安は増している。

もちろんハンクが一緒なのは本当に心強いことなのだが、図書館へ行って、もしもこの世界が『誰かのつくった仮想の世界』だと明らかになってしまったら、この先どうすればいいのか。
これまで感じたことのない不安と恐怖が綯い交ぜになった感情は、エレノアを戸惑わせていた。


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