ここが乙女ゲームの世界でも好きにさせてもらいます!

全使用人の(おさ)とも言える、執事長のヘルマンからの指示を無視してまで、レイラに告げ口する者はおそらくいないだろう。

「そうね。お父様がお仕事でいらっしゃらない時で本当によかったわ……」
エレノアはそう言って、ほっと息をついた。この状況をどうするか思案するのに、時間が必要だと思ったからだ。

「それにしても例の手紙に書かれていたことが現実に起きるなんて、驚きました」
「ええ私も。本当に驚いたわ」
「……ということは、この世界はやはり『乙女ゲーム』とやらの世界なのでしょうか……?」

レイズの手紙が届いてから、エレノアはずっとその『乙女ゲーム』なるもののことを考えていた。公爵令嬢という立場としてはめずらしく、エレノアは日々勉学に励んでおり才媛と誉れ高いが、それでもまだ答えには辿り着いていない。
ただ、“シミュレーション”という言葉のみを紐解いていくと、この世界は『誰かのつくった仮想の世界』ということになってしまう。

(でも私も周りも、間違いなく自分の意志があるわ……)
エレノアが考え込んでいると、部屋のドアをノックする音が聞こえた。

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